デンマーク

 

愛しのデンマーク

ンマークはすっかり日本でおなじみのアンデルセンの国です。充実した社会福祉制度や高税金、女性の社会進出、ワークライフ・バランスや風力発電などデンマーク・モデルがよく知られています。童話のようにかわいい街並みや自転車で走り抜ける金髪の親子など、素敵な光景にもあふれています。シンプルなデザインも特徴で、家具や食器にデンマーク人の美意識を感じることもたびたびです。

ただし、一言で私のデンマークの印象をまとめると、「昭和の雰囲気」。デンマークは、どんなにモダンでスタイリッシュに見えても、どこかのんびりした変わらぬ良さがあります。

路に例えていうと、日本は「ごみ一つ落ちていないピカピカの完全に舗装された道」。一方、デンマークは「ブロック塀や路傍にタンポポが咲き、時としておじさんが立ち小便をしているような道」。そんなイメージです。

スピッツの歌に「正しく飾られた世界で…」という歌詞がありましたが、日本がそうだとすると、デンマークは「正しいかどうかより、自分らしく…」という感じがぴったりきます。

れでも私が初めてデンマークに来た1991年に比べると、デンマーク人の鷹揚さはなくなってしまったように思います。移民流入が進み、近年のデンマークはとても排他的になってしまいました。デンマーク国民党の台頭で移民政策がどんどん厳しくなり、「デンマーク人たるには」といったレッテルを貼る社会的な風潮が色濃くなった気がします。それは翻ると、デンマーク人にとっても住みにくい社会なのではないかと思います。つまり、「こうあるべき」という規範に従ったほうが無難だからです。いまどきの若い20代のデンマーク人と話していると、ステレオタイプでつまらないと感じる時がありますが、こういった時代の変遷とも関わりがあるのではないかと思っています。

 

ボーンホルム島においでよ

ンマークの首都から飛行機で30分、バス・フェリーだと3時間のところにボーンホルムという小さな島があります。島は周囲100㎞、人口4万人。かつてはニシン漁で栄えたバルト海に浮かぶ島です。ロシアやポーランドにも近く、冷戦時代は東西の両陣営にとって重要な意味をもつ戦略的拠点の一つでした。

こに私は住んでいます。上の地図で見ると、ボーンホルムは一番右側に位置しています。当たり前ですが、車で走っているとどこかで海に出ます。私のパートナーはいつも「島に住んでいると迷子にならないから助かる」といって適当に運転しています。ちなみに島に信号は4つ。町の中では時速40㎞で運転しますが、町を出ると80㎞が法定速度です。

 

ーンホルムはコンパクトです、変化に富むおもしろい地形をしています。

の北側はゴツゴツした岩盤がむきだしになっていて、東尋坊を彷彿とさせる断崖絶壁が連なっています。採石も有名で、昔の砕石場はロッククライミングのルートとして使われています。島には200を超えるクライミングのルートがあり、車で簡単に行き来できますし、キャンプして2-3日連泊してクライミングができます。クライマーにとってはパラダイスのような場所です。

 

側は白砂が広がるビーチです。世界一美しいと私は思っています。砂の粒がきれいなため歩くとキュッキュッと泣きます。ビーチまでの小道は松林になっていて、一人で思考するにも読書するにも最適。静かな時間が得られます。    

 

おらが村 ペダスカー村

んなボーンホルムで私の住むdanskehavnは、フェリーの船着き場から車で25分ほど走った中南部にあるペダスカー村に位置しています。正確にいうとペダスカー村の中心地からさらに4㎞。バスやスーパーマーケットを利用するときは村まで行きます。

ダスカー村の人口は約200人。現在、子供のいる家族が一件と、確認されています。村には去年までパン屋さんがありましたが、それが閉店して以降はスーパーマーケットしかありません。このスーパーマーケットは創業1901年の老舗。夏はツーリストや別荘のお客さんで賑わうペダスカー村ですが、冬の閑散期が長く、頻繁に店じまいの話が出ます。村のためにがんばってくれているオーナーさんには、なんとかこれからも経営を維持してもらいたいと願っています。

つては銀行や床屋さん、工場などもあったというこの村。古いチーズ工場の建物だけが当時を忍ばせます。村の通りを一人歩いているときにふと、この村に子供の笑い声があふれ、人々が集い、ともに喜び悲しむという営みがあったときはどのようだったのだろう…と想像することがあります。そして、我にかえったときに、まるでドラクエで村が突然なくなってしまったかのような寂しさを覚えます。

過疎化はどこでも深刻な問題ですが、ボーンホルムでも若い人が仕事がないといって島を去ります。近年は政府主導の過疎化活性策もあって、ボーンホルムの総人口が増加に転じたと聞きました。ボーンホルムにあっては、私も若く新しい入植者。活性化まではいかないまでも村でお役に立てればと願う日々です。

 

danskehavnとご近所さん

ペダスカー村の中心からまっすぐ麦畑を突っ切った道をいくと、曲がり角にdanskehavnが見えてきます。

を曲がらずそのまま道なりにいくと、海に出ます。小さな漁港と一軒の燻製レストランがあります。初夏から秋にかけてハマナスの花が香る浜辺です。浜辺づたいに散歩気分でブラブラ行くと、ミシュラン☆のレストラン、Kadeauに出ます。Kadeauの住所はペダスカー村です。Kadeauは自前で食材を育てていますが、その菜園はレストランの裏の林にあります。

れ以外にはあまり何もないところです。空の広さに圧倒されます。空がきれいだということは、夜空の星もよく見えるということです。真夏の天の川には子供の頃、夏のキャンプで見たとき以来の感動を覚えました。

dankskehavnでは5㎞圏内を近所としてみなして、いろんな人のお世話になっています。ご近所には親戚も住んでいます。困ったときも心丈夫です。ボーンホルム全体が停電したとき、風邪で熱をだしたとき、いろんなときに駆けつけてくれます。コーヒーを飲みに立ち寄ってくれることもあります。パートナーのお兄さんはペダスカー村でワイナリーを開いていて、そこで羊を飼っています。私の編み物好きが高じて「羊毛があったらな」とつぶやいた、その一言がきっかけになりました。

は雪に埋もれ、春になれば水仙の黄色がまぶしく、一年はあっという間に過ぎていきます。平坦ではありませんが、デンマークの片隅での日々を好奇心いっぱいで生きています。