コペンハーゲン大学|経済学修士について

コペンハーゲン大学は設立1479年。びっくりするぐらいの歴史を誇ります。日本でいえば、イザミヨ建武の新制が1334年だとして、室町時代くらいです。そういう意味では、学術探求の長い歴史の上に、西洋は成り立っていると言えます。日本では大学の歴史と言えば、せいぜい100年かちょっと。学術の世界では新興国です。

しかしながら、日本人はなぜか、日本の大学が世界トップだと信じている傾向があります。私もそうでした。コペンハーゲン大学の経済学修士に留学したとき、舐めきっていたのです。だから、日本に送付されてきた履修カリキュラムを見て、学部の科目である数理経済学とマクロ経済、ミクロ経済の選択が義務付けられていることに怒りました。「私は院に留学するのだ。日本の大学で学部の単位を取得しているのに、なぜコペンハーゲン大学ごとき大学で、学部科目を再履修せねばならないのだ」と。その怒りは、大学院初日のオープンキャンパスで、今思えば恐れ多くも、数理経済学担当の助教授(当時)にぶつけられました。その助教授はロンゲでちゃらちゃらしていて、いかにも頭が悪そうで、白い皺しわのシャツにジーパンを履いていました。人間を外見で判断してはならない、とはこのことです。恐ろしくキレる数理経済学者でした。そんなこととは露とも知らぬ私。その時の助教授の返答に、さらに怒り爆発です。彼曰はく「えーっとねー。君のねー、大学の単位見させてもらったけど、ソフトなんだよねー」。ソフトとは、こわいかに!

しかし、ハードコアの経済学がどんなものかを知るのに、それほど時間はかかりませんでした。マクロ経済、ミクロ経済はまだいいとしても、数理経済学に歯が立ちません。それはそのはず。日本の大学では経済数学の履修は必須でしたが、数理経済学は選択だったのです。当時、ラクショー科目中心の編成で楽々卒業した私が、数理経済を選択するはずもなく。そして、コペンハーゲン大学ごときの数理経済学なぞ、なんとでもなると高をくくっていました。しかし、実は、コペンハーゲン大学はヨハンセンテストで知られるヨハンセン教授のお膝元、統計が大好きな大学だったのです。

共和分は院の選択科目

このときばかりは必死に勉強しました。中学生レベルの統計や行列式から勉強しなおしたと思います。最後はよく分からないなりにテストに合格。修士レベルの数理経済学へと駒を進めました。修士の数理経済では、タイムシリーズデータの取り扱いで、ステーショネリーやホモジェナイエティー、アイゲンバリューなど、魑魅魍魎の世界を息も絶え絶え、乗り越えました。当時の同級生には関数の連鎖公式や積分からプロジェクション何とかまで、本当にいろいろ教えてもらいました。彼らは今や、ドイツやデンマークの中央銀行で活躍するエコノミストです。

その時習った、高等数学はすべて忘れてしまいました。でも、ハードコアに勉強することを楽しいと思った高揚感は忘れられません。図書館にこもり、文献を漁り、思索に没頭し、青臭い議論を友人と交わし、真実を探求する喜びがありました。

世の中には、いろいろな「大学ランキング」なるものがあります。経済学部の場合、大概ハーバード大学が1位ですが、ランキングの評価機関によって、20位以降の順位は大幅に違ってきます。たいていの評価は、教授の論文発表数、ノーベル賞の数などによりますが、それ以外の要素も順位を左右するようです。ですから、特定のランキングによって東京大学とコペンハーゲン大学を比較することは難しいです。東京大学を遥かに上位に評価しているランキングもありますし、その逆もあります。

ただ言えることは、コペンハーゲン大学を舐めたらアカンで。とても真摯に学術に取り組んでいる、いい大学だったと思います。